第46話

顔離は携帯をポケットに戻すと、振り向いて、視線を淡々と固定させた。

林凱は大きなほうきを手に、長い廊下で腰を曲げ、彼女の前で真面目くさって掃いていた。床には密な筋が何本も残されている。

金縁の眼鏡がずり落ちて鼻先に来ると、時折指で押し上げる。一見熱心に掃除しているようだが、目は落ち着かず、キョロキョロしていた。

顔離は彼から二、三メートルの場所に立ち、表情は穏やかだった。やがて、彼女は一歩前に踏み出し、ゆっくりと林凱に迫っていった。

彼女の気配を感じたのか、林凱はほうきを握る手が震え、その場で固まってしまった。背中を丸め、視線は床の白いスニーカーに落ちていた。

二人はしばらく膠着状態...