第75話

「家族なら信頼し合うべきだよね？」

彼女はそこに立ち尽くし、漆黒の瞳で彼をじっと見つめた。

視線が絡み合い、探り合い、最後には諦めたように彼の深い瞳に溺れていった。

彼は低い声で言った。「だから、阿深が何を言ったとしても、あるいは蘇野が何を話したとしても、君はただ僕を信じてくれればいい。これから何が起きようとも、僕が君にしたことは全て、君が生きていくためだったと信じてほしい」

彼女は顔を上げ、握りしめた指先が小さく震えた。

「君と僕は違う。僕の人生はもうすぐ終わるけど、まるで始まってもいなかったみたいだ。昔の僕は陰気で冷たくて、悪いことばかりしてきた。やっと報いが来たと思ったら、君に...