第30章 お前は一体、敵か味方か

「いい人材を採用したな!」

氷室ジンは上機嫌で目を細め、速水ミオの肩をポンと叩いた。

「仕事も大事だが、体も資本だぞ。どうだ、これから食事でもしながら会社について詳しく教えてやろう」

掌から伝わるその体温に、速水ミオは眉を顰め、反射的に体を引いて彼の手を避けた。

五年前のあの事件以来、彼女は男性との接触に強い拒絶反応を示すようになっていた。

ましてや氷室ジンのような、知り合って間もない男なら尚更だ。

「結構です」

速水ミオは即座に拒絶した。

「お腹は空いていませんので」

彼女は氷室ジンに対し、礼儀正しく、しかし他人行儀な笑みを向けた。

「氷室社長、他に御用がなければ仕事に...

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