第37章 アリンは私のそばにいたい

速水の母は顔を上げた。滴り落ちる鮮血が視界を赤く染め、その双眸は怒りで充血している。

「はん、速水家にまだ面目なんてものが残っているとでも?」

五年前、速水ミオが未婚で妊娠した騒動。それに続き、速水の父が外で愛人を囲っていた事実が露見し、世間を騒がせた一件。速水家の名声など、とうに地に落ちて泥まみれだ。

今さら面目も何もあるものか。

速水の父は言い返す気力もなく、散乱したガラス片を踏みしだきながら、携帯電話を手にバルコニーへと向かった。

ここまで事態が大きくなってしまえば、すべてのメディアに記事を撤回させる力を持つのは、黒崎統夜をおいて他にいない。

彼は速水ナナに電話をかけた。ま...

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