第79章 彼をパパと呼ぶ

「黒崎の奥様」

部屋の中から、たどたどしい日本語が聞こえてくる。

「本当に、この二人とも連れて行ってもいいんデスカ?」

「いちいちうるさいわね」

女は苛立ちを隠そうともせずに吐き捨てた。

「要求は一つだけよ。この二人を連れて行きなさい。できるだけ遠くへね。二度とS市に戻ってこられないように。その後、あんたたちがこの子たちをどうしようと知ったことじゃないわ」

んーっ、んーっ!

両手を後ろ手に縛られ、部屋の隅に転がされていた東雲シオが顔を上げた。床を激しく蹴り、口枷の下からくぐもった抗議の声を漏らす。その充血した瞳は、目の前の人物を射抜くように睨みつけていた。

ヴェールで顔を隠し...

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