第34章 道に嵌った

「不注意にも罠にはまってしまいました」というのは、よく聞こえる言い方だ。

実際は薬を盛られたのだ。人を生きるか死ぬかの境界へと追いやる媚薬を。

藤原和也のビジネスでの冷徹さを考えれば、明日彼が目を覚ました時、相手は良い目に遭わないだろう。

だが、今はそんなことを心配している場合ではない。

藤原和也の顔が不自然な赤みを帯びているのを見て、私は彼が今夜を越せるかどうかだけが心配だった。

どうすべきか迷っていた時、寝室に置いた携帯電話が大きく鳴り響いた。着信表示を見た私は、救世主を見つけたかのように急いで電話に出た。

「チケット手に入れたよ。西村炎って奴が持ってて...」

「桜!」

...

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