第40章 おめでとう、パパになるんだね

何が早いって?

八つ裂きにしたいほど、もっと詳しく聞きたい気持ちがある。

でも、これ以上聞くのは失礼だと思った。

ここで引き際を知るべきだろう。

今日のコンサートの曲は、どれも私のお気に入りプレイリストに入っているものばかり。

全部聴き終わっても、まだ余韻が残っていた。

歌手が退場するにつれて、夢から覚めたような非現実感に襲われた。

椅子にぼんやり座ったまま、騒がしさが収まり、ゆっくりと会場を後にする人々を見回す。

心の中は恐ろしいほど空っぽだった。

今この瞬間まで、ずっと握りしめていた携帯電話には、藤原和也からのメッセージも電話も一切なかった。

私が放心状態の間、田中悠...

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