第48章 私たちは区役所に行く

無表情で頭を下げながらスマホをいじっていた藤原和也も、瞬時に顔を上げて私を見た。

逃げ場もなく、私は意を決して出て行くしかなかった。

藤原和也の表情がわずかに引き締まり、柔らかな声で言った。「どうして病院に来たの?」

先ほど藤原朋美に冷たく当たっていた口調とは全く違う。

以前の私なら、恋愛脳で彼の中に何か特別な気持ちを感じ取っていたかもしれない。

今は皮肉しか感じない。

私が口を開く前に、藤原朋美はオフィス入口の医師紹介モニターをちらりと見て、急に笑い出した。意味ありげに言う。「なぜこんな専門医に診てもらってるの?まさかHPVにでも感染したの?そんなの不品行な私生活を送ってる人だ...

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