第17章

血文字の刻まれた、あの黒い断掌印が、まるで命を宿したかのように荒木千夏へと飛んでいくのを、私はただ見つめていた。ぞっとするような恐怖が、冷たい潮のように足元から這い上がってくる。私は必死にその印を掴むと、床に二本の黒い跡を引きずりながら、印と共に前へと引きずられていった。

『杏子! 手を放して!』

柳沢明日香の声が、私の脳内に直接響く。

でも、放すわけにはいかない。これは、私たちに残された唯一の武器なのだ。もしこれが荒木千夏の手に渡れば、取り返しのつかないことになる。

その状況を見た川崎美奈が、祓魂刀を私に向かって容赦なく振り下ろした。刀身が空気を切り裂き、ひゅう、と耳障りな...

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