第21章

窓際に張り付き、私は身を乗り出して、窓の外の光景を凝視した。

鏡の池は、月光を浴びて不気味な銀の光を放っている。だが、何かがおかしい。

私は息を呑み、瞳孔をわずかに収縮させた——鏡の水面は、本物の鏡のように静まり返っているというのに、空に浮かぶはずの月の影が、どこにも映っていないのだ。理屈に合わない。これほど明るい満月なら、水面にはっきりとした倒影を残すはずだ。

「時間は、あまり残されてはいないぞ」

月の鬼の声が、背後で不気味に響く。

「あと、一分だ」

額の冷や汗が、頬を伝ってぽたりと落ちた。心臓の鼓動が、警鐘のように激しく鳴り響く。柳沢明日香の血文字は途中で断たれてし...

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