第23章

 春の陽光が、幾重にも重なる枝葉の間から桜並木に降り注ぎ、地面をまだらな光の影で染め上げていた。

 私は一人、ベンチに腰を下ろし、目の前で満開の桜が微風に舞い散るのを、ただぼんやりと眺めていた。

 なんて、美しい景色だろう。それなのに、今の私の胸には、ただ心が引き裂かれるような痛みしか感じられなかった。

「隣、よろしいですか」

 凛とした女性の声が、すぐそばで響いた。今は誰にも邪魔されたくなくて、私は無意識のうちに首を横に振ろうとする。

 けれど、その声には妙に聞き覚えがあり、はっとさせられた。

 慌てて顔を上げると、現代的な服装の若い女性が、私に穏やかに微笑みかけていた。

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