第5章

ライブ配信の画面が、突如としてノイズと共に変化した。荒木千夏のアイコンが不気味に点滅した後、ぱっとカラーに戻る。私、白川杏子、柳沢明日香、そして川崎美奈のアイコンと並んで、画面に四つの顔が表示された。

その時、月の鬼の低く沈んだ声が、まるで能楽の古謡のように寮内に響き渡った。

「四名のプレイヤー諸君、一次試験の通過、おめでとう。これより『結束の儀式』モードに移行する。もし四人全員で次の試練を全滅せずに通過できた場合、全員に復活の機会が与えられる」

その言葉が終わるや否や、骨まで凍みるような冷たい風が、開いたままの窓から吹き込んできた。私たち三人は目の前の光景に息を呑む——荒木千夏の姿が、虚空から徐々に実体化し、彼女は制服姿のまま、部屋の中央に呆然と立っていた。その瞳は、恐怖と混乱に満ちている。

「わ、私……どうして、ここに?」

千夏は辺りを見回し、ふと明日香の姿を捉えると、その表情が瞬時に憎悪で歪んだ。彼女はヒステリックに明日香を指差し、金切り声を上げる。

「あんた、一体何なのよ!」

明日香はびくりと肩を震わせ、怯えたように私の背後に隠れた。

荒木千夏は、その場にがくりと崩れ落ちると、両手で頭を抱えて泣き叫んだ。

「百鬼夜行だなんて、参加したくない! あいつら三人で十分じゃないの? お願いだから、私を巻き込まないで!」

その絶望に染まった声に重なるように、再び月の鬼の声が響く。

「第二幕『化け鬼』、まもなく開幕。各員、五分以内に五一二号室へ移動せよ。違反者は百鬼に喰われるものと知れ」

見上げると、天井に血のように赤い数字のカウントダウンが浮かび上がっていた。5:00……4:59……。

荒木千夏は弾かれたように立ち上がると、窓へと駆け寄った。

「窓から逃げよう!」

彼女は狂ったように窓の取っ手をガチャガチャと引く。

「こんな気味の悪い場所にいるくらいなら、飛び降りて死んだ方がマシよ!」

川崎美奈が冷静に歩み寄り、窓を押し開けて外を指差した。

「よく見てください。ここはもう、私たちの知っているキャンパスではありません」

窓の外は、底なしの漆黒の闇に包まれ、キャンパスの灯りは一つも見えない。ただ、遠くにいくつかの青白い鬼火が、ゆらゆらと宙を漂っているだけだった。冷たい風が、低い呻き声と共に部屋へ流れ込み、肌を粟立たせる。

川崎美奈は、眼鏡の位置を直した。

「私たちは、もはや現世にはいないのかもしれません。今は、このゲームのルールに従う方が安全です。むやみに逆らわない方がいい」

「伝説によれば」

美奈は、冷静な分析を続ける。

「すべてのゲームをクリアする必要がある、ということでしょう」

荒木千夏は壁際に後ずさり、まるで私たちが化け物であるかのように、恐怖に歪んだ目で三人を見つめていた。

川崎美奈は、今度は柳沢明日香の方を向いた。

「柳沢さん、さっきの腕の血文字はどういうことですか? あのヒントが、結果的に私たちを救ってくれたようですが」

明日香は静かに手話で、自分でも原因はわからない、と伝えてくる。私がそれを口頭で通訳した。

「危険を感じると、腕に血文字が浮かび上がってきて、その意味を本能的に理解できるだけ、だそうです」

「あるいは、このゲームから与えられた特殊能力、とか?」

私はそう推測した。

川崎美奈は再び眼鏡を押し上げる。

「これに頼って、このゲームを完璧にクリアできることを願うばかりです」

荒木千夏は一言も発さず、ただ明日香を値踏みするように、じっと見つめ続けている。その瞳には、恐怖と疑念がどす黒く渦巻いていた。

カウントダウンは既に半分を過ぎ、私たちは五一二号室へ向かわざるを得なかった。部屋を出ると、廊下の両側には浮世絵風の不気味な妖怪画が掛けられ、提灯が弱々しい赤い光を放っている。画の中の妖怪たちの目が、まるで私たちの動きを追っているかのように見え、背筋が凍る思いだった。

やがて、五一二号室の前にたどり着く。私たち四人は、不安に胸を震わせながら立ち尽くした。月の鬼の声が、ドアの向こうからくぐもって聞こえてくる。

「百鬼夜行第二幕、『化け鬼』ゲーム、まもなく開始。各員、入場せよ」

ドアに、すうっと一行の血文字が浮かび上がった。

『一人は鬼、三人は人。真の姿を見極めし者のみ、生還を許す』

私は深く息を吸い込み、隣に立つ明日香の手を固く握りしめて、重いドアを押し開けた。

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