第115章

「ふふっ!」

「ご遠慮します」

 篠崎アエミは二人を一瞥すると、冷ややかに言い放った。

「お二人でどうぞ。私はまだ……」

 そう言い残し、踵を返して歩き出す。

「待て」

 冷徹な声が響き渡った。背筋が凍るような寒気を孕んだ声だ。

 篠崎アエミの体が強張る。だが、一瞬足を止めただけで、彼女はすぐに車のドアを開けて運転席に乗り込んだ。

 ドアを閉めようとしたその瞬間、大きな手が強引に扉を押し留める。

 視線を上げると、その長い指の持ち主が目に入った。

 篠崎アエミは露骨に不快そうな表情を浮かべる。

「何のご用ですか? 従、兄、さ、ん」

 従兄という単語を、一文字ずつ区切っ...

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