第73章

炎天下の夏。

それなのに、篠崎アエミはまるで氷の洞窟に突き落とされたかのような悪寒を感じ、そっと腹部に手を添えた。

昨日帰宅した際に襲ってきたあの恐怖が、未だに心にこびりついて離れない。

あの時、鈴木芽衣は執拗に手を上げてきた。

しかも、助けを呼ぶことさえ許さなかった。

運良く榎田神也が通りかからなければ、恐らく失血死していただろう。

彼女は拳を握りしめ、関節が白くなるほど強く力を込めた。

「まだ、弱すぎる……。誰が彼を害そうとしているか分かっていても、復讐さえできないなんて」

鈴木芽衣は、榎田神也にとって『高嶺の花』だ。

たとえ彼女がどんな過ちを犯そうとも、彼はきっと庇う...

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