第102章

ぼんやりと午後の時間を過ごし、退勤時間になっても、葉田知世はまだ何も思いつけずにいた。

どうしても家に帰りたくなくて、彼女はタクシーを拾い、まず病院へと向かった。

葉田晨はアイパッドをいじっていたが、彼女が来たのを見るとすぐに画面を消して傍らに置いた。彼の目は赤く、泣いた痕跡があった。

心臓移植を受けたばかりの人間は、感情を大きく揺さぶられてはならない。

「どうして泣いてたの?」と彼女は訊ねた。

「なんでもない」葉田晨はそう言うばかりだった。

葉田知世は手を伸ばしてアイパッドを取り上げた。葉田晨のパスワードは知っている。ロックを解除すると、そこには藤原羽里と天空橋蘭のトレンドが表...

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