第65章

華徳病院。

藤原羽里と葉田知世が駆けつけた時、葉田晨はすでに術前準備を終え、手術室へと運ばれているところだった。

「はい、ご家族の方、こちらにサインを。心臓移植は早ければ早いほどいい」田村健が出迎え、挨拶もそこそこに手術のリスク同意書を葉田知世に手渡した。

葉田知世の手は震え続け、同意書の内容は目に入らず、字を書くことすらままならない。彼女は深呼吸をして、どうにか自分を落ち着かせようとした。

藤原羽里の手が彼女の手に重ねられ、その手を握ってサインを済ませた。

「大丈夫だ、心配するな」と、彼が低い声で言った。

「うん……」葉田知世は少し鼻声になり、その脆さに彼は胸を締め付けられた。...

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