第69章

「子供の頃、わたしと羽里お兄さんはよくここで遊んでいましたの」

天空橋蘭は葉田知世を連れて、藤原家の大池に沿ってゆっくりと歩きながら、ぽつりと口を開いた。

「よく大池のほとりでままごとをしていたんです。ある時、羽里お兄さんが目を離した隙に、わたしがうっかり水に落ちてしまって。彼は岸辺でわんわん大泣きしていましたわ。結局、執事の方が助けに来てくださったんですけど。この一件で、おばさまは羽里お兄さんを一日中跪かせ、食事も与えなかったそうです」

「羽里お兄さんは幼い頃にお父様を亡くされて、それにうちには男の子がいませんでしたから、父はずっと羽里お兄さんを自分の子供のように思っていました。彼が...

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