第74章

「どういう意味だ」藤原羽里の表情が、たちまち険しくなった。

「別に。自分のものじゃないのに、身につけていても火傷するだけでしょう」葉田知世の口調は冷ややかで、まるで藤原羽里を完全な他人として扱っているかのようだった。

藤原羽里は彼女の眼差しに苛立ちを覚えた。

「いらないなら捨てろよ、道端にでもな。T市中の女どもが奪い合いになるか見てみろ!誰が君みたいにそんなに気高いって言うんだ。忘れてたぜ、君が俺のこんなはした金に目もくれるわけないよな!」彼は思わず声を荒らげた。

彼女が物を返してきたその瞬間、藤原羽里の心はわけもなくかき乱された。この女がいらないのは、あのブレスレットではなく、自分...

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