第76章

葉田知世は今回の肺炎で、病院でかなりの時間を過ごした。

彼女が藤原羽里に対して拗ねてピンクダイヤモンドのブレスレットを返そうとしたのはあの日一度きりで、その後はまた何事もなかったかのように彼と接していた。

ただ、藤原羽里は彼女の過去との微妙な違いに気づいていた。以前は、二人は腹を割って話す仲ではなかったものの、親密ではあった。それが今では、すべてにどこか……遠慮とよそよそしさが伴っているように感じられた。

「知世、どう考えてるの」平原遥子が病院に葉田知世を見舞いに来て、ベッドサイドで林檎の皮を剥きながら尋ねた。

「もし私が彼に何も求めないなら、こんな風に信用されないなんて、絶対に離婚...

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