第80章

藤原羽里のオフィス。

平原青は今日、ことのほか暇なようだった。藤原羽里のソファで午前中ずっとのんびりと茶を啜り、昼休みになっても立ち去ろうとしない。

尋ねてみても、特に用事はない、会社の近くを通りかかったから少し寄っただけだと言う。

藤原羽里は葉田知世が新しい環境に馴染めているか心配で、十五階の様子を見に行きたかったのだが、平原青が居座っているせいで行くに行けなかった。

時計に目をやると、十一時半だった。

「妻と食事に行く。帰らないのか?」藤原羽里は顎をしゃくり、追い払うように言った。

「急ぐことはないさ。もしかしたら、君の奥さんが私に何か用があるかもしれないしな」平原青が言い終...

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