第88章

「余計な世話を焼かないでくれ!」と少年は言った。

思春期の少年は葉田知世より頭半分ほど背が高く、立ち上がるといとも簡単にボトルを奪い取った。

だが、その拍子に手が滑り、シャンパンの大半がこぼれ出てしまう。葉田知世は全身ずぶ濡れになった。

「きゃっ」葉田知世は小さく声を上げ、慌ててテーブルの上のティッシュボックスに手を伸ばす。上の階から見ていた数人は、その光景にさらに目を丸くした。

葉田知世は着ているドレスを見て泣きたくなった。

肝心な人に会う前にドレスを汚されてしまうなんて。最初からお節介など焼かなければよかった。

少年も慌てふためき、狼狽した様子で彼女を見つめている。

「別の...

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