第93章

藤原羽里は木村拓也のオフィスで午後いっぱいを過ごし、終業間際になって、彼が葉田知世に贈ったドレスをそっくりそのまま持ち帰った。

家路の途中、葉田知世は車の後部座席に置かれたそのドレスを見て、思わず悩ましげな表情を浮かべた。

「このドレス、あまりにも高価だわ。木村さんにとっては大したものじゃないのかもしれないけど、私が持っているとプレッシャーがすごくて」彼女は藤原羽里に言った。「ちゃんとした機会を見つけてお返ししないと」

「藤原家にない良いものなどない。ドレス一着で何を大げさな。ただ、君は藤原若奥様という身分を忘れるな。どんな贈り物でも受け取っていいわけじゃない」と藤原羽里は言った。

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