第13話

正直なところ、マルティナが今一番会いたくない相手は彼だった。しかし同時に、誰よりも会いたいと願っていた人物も……やはり彼だったのだ。

マルティナがようやく平穏に帰宅できると思った矢先のことだ。人の心に疎い車中の男でさえ、彼女の様子がおかしいことに気づいていた。とりわけ、今の彼女の痛々しい姿を目にした瞬間、彼の心臓は一瞬止まったかのようだった。

低く、詰問するような口調でベンジャミンは問いかけた。「以前はお前、こういう場所を嫌っていただろう。今はクラブ遊びが楽しいのか?」

ベンジャミンの服から漂う独特の香りが鼻をかすめ、マルティナは不意に目眩を覚えた。彼もようやく良心を取り戻したのかと思っ...

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