第130話

息がかかるほどの至近距離に、マルティナは呼吸さえままならないような錯覚に陥った。

この角度から見上げるベンジャミンの端整な顔立ちは、まさに完璧そのものだった。彫刻のように整った目鼻立ち、力強い顎のライン、そして誰をも虜にしてしまう魅惑的な瞳。

マルティナの心臓は、早鐘を打つように激しく高鳴っていく。

一体、彼は何を考えているのだろう? まさか、本当に気が触れてしまったのだろうか?

ベンジャミンはマルティナの表情の変化をつぶさに観察し、ようやく安堵の吐息を漏らした。少なくとも、彼女は自分を完全に拒絶してはいない。それだけで十分だった。

すぐ隣にはアレハンドロが座っている。彼が少し身をよ...

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