第136話

病院から戻ったマルティナの顔には、隠しきれない不安の色が滲んでいた。

怪我をした当人であるベンジャミンは、まるで何事もなかったかのように平然としていた。今の彼にとって重要なのは、自分に向けられるマルティナの態度だけであり、それ以外のことは些末な問題に過ぎなかったのだ。

皮肉な運命の巡り合わせと言うべきか、マルティナはついに、かつて彼に抱いていた感情の片鱗を――たとえそれがほんの僅かなものであっても――覗かせているように見えた。

二人はホテルの部屋に戻った。マルティナの手には、包帯などの手当用品や、主に抗炎症・抗菌作用のある内服薬など、病院から持ち帰った薬があった。

マルティナはすぐにベ...

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