第157話

去り際に、グレースはサイモンに向かって――正確には自分のスマホに向かって――手を振りながら言った。「サイモン、メッセージの返信忘れないでね! じゃあね!」

グレースが去ってしばらく経っても、サイモンは呆然としたままそこに立ち尽くしていた。

マルティナは、サイモンがあの子に一目惚れしたのではないかと疑わずにはいられなかった。ベンジャミンが咳払いをすると、ようやくサイモンは我に返った。

サイモンは慌てて弁解した。「ボス、勤務時間中にわざとサボっていたわけじゃありません! 申し訳ありません!」

どうやらサイモンは、これまでベンジャミンに何度も「しごかれ」てきたせいで、今や一種の条件反射のよう...

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