第169話

本来であれば、誰もがベンジャミンと手を組みたいと願うはずだ。彼との協力関係は、双方にとって確実な利益と安定を意味するからだ。彼が損失を出すことなど決して許さないため、リスクを負う心配もない。だが、アレハンドロは常識に逆らい、独自のルールに従ってその申し出を拒絶した。

「やめておこう。ミス・マルチネスに協力を持ちかけたのは、この手のかかる妹を連れて一緒に仕事をしたかっただけのことだ。君にそう言われた以上、この話はまた日を改めてすることにするよ」

アレハンドロは自信たっぷりにそう言い放ち、反論の余地を与えなかった。心底そう思っているかのような口ぶりだった。

しかしその瞬間、エレナは不穏な空気...

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