第44話

マルティナが立ち去ってからわずか数分後、ベンジャミンは目を覚ました。そして、自分がこのベッドで眠り込んでしまったことに、少なからず苛立ちを覚えた。彼の几帳面な性格からすれば、本来決してあり得ない失態だったからだ。

おそらく、このベッドにまだマルティナの残り香が微かに漂っていたせいで、いつの間にか眠りに落ちてしまったのだろう。

気のせいかもしれないが、ベンジャミンにはつい先ほどまでマルティナがここにいたような気配が感じられた。

だが、目を開けてもそこには何もなく、ましてやマルティナの姿などどこにもなかった。

こめかみを揉みながら、ベンジャミンは頭痛が徐々に増してくるのを感じた。

彼は立...

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