第70話

まさか、息子はもう自分を信じていないのではないか?

その可能性が脳裏をよぎった瞬間、エリザベスの顔色は一気に曇った。今すぐにでもマルティナをベッドから引きずり下ろし、外へ叩き出したいという衝動に駆られた。

だが、あいにくレスリーがまだその場にいたため、エリザベスはあからさまに本心をさらけ出すわけにはいかなかった。

結局、彼女は湧き上がる怒りを無理やり押し殺し、部屋から姿を消すしかなかった。

ベンジャミンの意向では、エリザベスは二階へ上がるべきではなかった。一階で指図する分には自由だが、二階は別だ。

彼女が何をしようと構わないが、二階はマルティナの領域であり、ベンジャミンは誰かが彼女を...

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