第82話

彼の指先がわずかに内側へ丸まったが、結局、彼はただマルティナの手を再び強く握りしめただけだった。まるで糊付けされたかのように、決して離れまいとして。

エイミーはまだ状況が飲み込めていないようで、なんとかして自分の存在感を示そうとした。「ベンジャミン……エリザベスが、この二日間は戻ってあなたに付き添って……コホン、彼女に付き添ってほしいって……」

こんな時に、エイミーはよくもまあそんなことが言えたものだ。まさに怖いもの知らずである。彼女はただ意図的にマルティナを不快にさせ、できれば恥ずかしさのあまりそのまま立ち去らせたかったのだ。

かつてマルティナが家出という手段を使うたびに、ベンジャミン...

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