第85話

最初はただの大騒ぎから始まったことだったが、今では静かに、そして勤勉に作業が進んでいた。あるいは、マルティナがベンジャミンに心底失望し、無駄口を叩く気力さえ失せていたからかもしれない。

マルティナは仕事に没頭し、ノートパソコンに覆いかぶさるようにして、絶え間なく描画と着色を続けていた。忙しくも満ち足りた時間の中で、彼女は時の経過さえ忘れていた。以前よりも、人生が充実しているように感じられた。

かつてはベンジャミンを中心に世界が回っていて、ただその周りを空回りするだけだったが、今は自分の人生がある。真の自由を手に入れるのは困難だとしても、彼女はそのために努力するつもりだった。

ふと集中から...

ログインして続きを読む