153話

マルコムは鼻を鳴らし、両手を広げた。「彼女には理由がなかったからさ」

ソーヤーは思わず笑ってしまった。マルコムのリースを擁護する姿は、ただの贔屓に聞こえた。

「マルコム、リースは君の妻かもしれないが、事実に基づいて話そう。私の娘は水を恐れているんだ。そしてそこにいたのは彼女たち二人だけだった。まさかシャーリーが自分から飛び込んだとでも言うのか?」

「彼女の意思ではなかった」マルコムは確信を持って言い切った。

「それが私の言いたいことだ!」ソーヤーは声を張り上げた。「彼女が飛び込んだのではないなら、誰が?リースしかいないだろう」

それまで黙っていたリースが、群衆の中ではっきりと聞こえる...