162話

翌日。

リースの携帯が鳴り、彼女が画面を見ると、微かな笑みが顔に浮かんだ。いつも冷静なリースにしては小さいながらも目立つ変化だった。それを観察していたマルコムは、誰がそんな彼女の顔に純粋な笑顔をもたらす力を持っているのか、思わず不思議に思った。

リースはすぐに布団をはね除け、バスルームへ向かった。マルコムは静かに彼女の後をつけ、ドアの外に立ち、会話を盗み聞きしようと耳を澄ました。中では、彼女のいつもの落ち着いた声に優しさの色が混ざっていた。

「わかったわ、住所を送って。行くから。でも時間を無駄にしないで—長い昼休みじゃないんだから」と彼女は言った。

これ以上の会話を聞き取れなかったマル...