292話

リースが落ち着きを取り戻すと、自分の大胆さに驚いた。彼女は衝動的にマルコムにキスしていたのだ。身を引こうとした瞬間、マルコムは彼女の頭をしっかりと押さえ、キスを深め、逃げる隙を与えなかった。彼女は彼の中に溶け込み、唇は切望の輝きを放っていた。

マルコムの誘惑に満ちた声が彼女の耳元で囁いた。「ダーリン、車の中で続けてみない?」

「車の中で」という言葉にリースは背筋に震えを感じ、現実に引き戻された。「ダメよ…」

彼らはオフィスの真向かいにいて、ラッシュアワーの喧騒の中にいた。こんな忙しい時間に揺れる車があれば、誰でも気づくだろう。

マルコムは、一瞬の誘惑に負けそうになりながらも、完全に本気...