320話

マルコムはリースからの誘いを断るような人間ではなかった。特に彼女がこんな優しい声色を使う時は。彼女の声は子猫の喉鳴きのように柔らかく甘く、彼の心をくすぐり、愛情を掻き立てるものだった。彼は彼女を二人だけの聖域、共有の寝室へ連れ去りたいと切望していた。そこで彼女の優しい態度を味わい尽くしたかった。それは彼だけの目に留めておきたい宝物だった。

「部屋に戻って果物でも食べようか」と彼は提案し、食器を置いて、リースの周りに腕を回しながら階段を上り始めた。

クララはテーブルにまだかなりの量の食べ物が残っていることに気づき、急いで心配の声を上げた。「ご主人様、食事はどうされますか…?」

「捨てておい...