77話

リースは彼らの前を足早に通り過ぎ、二度と振り返ることなく階段を上がっていった。

「リース」とナンシーが唐突に呼びかけた。「あなたの妹と私がここに座っているのが見えなかったの?」

「もちろん見えたわ」リースは立ち止まったが、彼女たちの方を向かずに答えた。「ちょっと何かを取りに来ただけよ。すぐに邪魔しないから」

世間話や表面的な愛想はリースの得意とするところではなく、今さらそれを装う必要性も感じなかった。

リースの無関心な態度にナンシーの怒りが爆発し、彼女は腹立たしげに椅子から立ち上がった。「私たちが見えていたなら、挨拶くらいできないの?それともフリン家に嫁いだせいで基本的な礼儀まで忘れて...