第36章

今日は本来土曜日だったが、高橋グループは異常なほど賑わっていた。

多くの社員が人事担当者の周りに集まり、状況を尋ねていた。

ある社員が興奮した様子で声を上げる。

「未海さん、本当なの?会社が倒産しなくて済むって?じゃあ私たち、このまま働き続けられるの?!」

人事担当の水原未海は38歳。高橋グループで9年間勤務してきた。

会社のベテランとして彼女は十分理解していた。佐藤海が高橋グループを引き継いでからというもの。

業績は右肩下がりで、収支が合わなくなっていた。

ようやく藤原家に買収されて、社員たちは活躍の場が広がると思っていた。

しかし赤字は続くばかり。

会議では、佐藤海はい...

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