第43章

藤原時夜は立ち上がり、彼の周りの戦場から距離を置いた。

歩を進めて高橋玲の傍に立つ。

高橋玲は首をすくめ、また彼が発作を起こして自分を掴みかかるのではないかと思った。

そこで自分の弁解を口にした。

「言ったでしょ、あなたがここにいるなんて知らなかったわ。友達の浮気相手を捕まえるのに付き合っただけよ。藤原社長ならわかってくれるでしょう？」

藤原時夜は冷ややかに鼻を鳴らしたが、手を出すことはなかった。

最初は彼女が自分を尾行していると思い、心中穏やかではなかった。

だが違うと分かった今、心が宙ぶらりんになり、かえって胸が苦しくなった。

足立卓夫は二人が並んで立つのを見て、すぐに近...