第92章

高橋グループ。

 嵐のような一週間が過ぎ去り、オフィスにはようやく平穏な空気が戻っていた。

 田中重栖はここ数日、広報対応に忙殺されていたが、今日は打って変わって手持ち無沙汰だった。

 暇になると、途端に喉が疼きだす。ニコチン切れだ。

 彼はデスクの上のライターを鷲掴みにすると、席を立った。

 屋上の鍵は開いていた。

 ここは普段、社員たちが昼食をとったり、息抜きをしたりする憩いの場だ。

 田中重栖が紫煙をくゆらせようと火を点けた瞬間、背後から馴れ馴れしく肩を組まれた。

 不意を突かれた彼は、煙を吐き出すタイミングを失い、盛大にむせ返った。

「ゴホッ、ゴホッ!」

「おい田...

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