第31章

『コンコン』

ドアの外から、西園寺蓮の声がした。

「起きたか?」

しばらくして、立花柚月がドアを開けた。

目元は少し赤く、顔には水滴がついている。彼女は少し決まり悪そうに笑った。

「ごめんなさい、顔を洗っていて」

「目が覚めたならいい。下に降りて食事にしよう」

西園寺蓮は彼女の赤い目元を一瞥した。昨夜の記憶が奔流のように蘇り、喉仏が動く。彼はくるりと背を向けた。

立花柚月が前を歩く。

その背中を見つめながら、西園寺蓮は唐突に尋ねた。

「まだ、痛むか?」

彼にとっては初めてのことだった。

経験など皆無だ。

だから彼女を傷つけてしまったし、何より求めすぎてしまった。

...

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