第56章

ナオミのその言葉で、立花柚月は腹を括った。

彼女はグラスを高々と掲げた。

隣にいたノゾミも、鶏の足をかじっていた手を止め、慌ててグラスを持ち上げる。

状況がいまいち飲み込めていない様子だったが、三人のグラスが重なり合った。

「乾杯」

その食事会は、実に愉快で心地よいものだった。

会がお開きになった頃、立花柚月はすっかりほろ酔い気分だった。足元の覚束ない彼女を、ノゾミが慎重に支える。

だが、時間が遅すぎた。タクシーが全く捕まらない。

ノゾミが焦り始めたその時、一台の黒塗りのバンが二人の前に滑り込んできた。

スライドドアが開き、西園寺蓮が姿を現す。

黒いマスクで顔を覆ってはい...

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