第72章

「母さんが何か言ったのか?」

西園寺蓮は、即座にそう察した。

「奥様は何もおっしゃっていません。私が自分で気づいただけです。もし奥様が本当に私のファンなら、あんな反応はなさらないはずですから」

立花柚月は彼に多大な恩義を感じており、これ以上彼と母親の関係を悪化させたくなかった。

「それに何より……私たちは不釣り合いです」

西園寺蓮は声を絞り出した。

「どこがだ?」

「すべてです」

その日の夕食は、ひどく重苦しいものとなった。

食卓には沈黙が支配している。数日前まで皆で集まって笑い合っていたのが嘘のようで、教授はその空気に耐えかねた様子だった。

彼は箸を置き、口...

ログインして続きを読む