第79章

立花柚月は、ナオミとカフェで待ち合わせていた。

ナオミは慌ただしく現れると、コートを脱いで椅子に置き、立花柚月の向かいに座るなり切り出した。

「前の事務所、辞めてきたわ」

「どうして急に?」

これまでナオミから辞職の話など聞いたことがなかった。以前、ナオミは「一緒に別の街へ帰ろう」と言ってくれたことがあったが、現在は翔のリハビリ中であり、医療環境の整ったこの土地にもう少し留まる必要があったのだ。

「もしかして、私のために辞めたんですか?」

「自惚れないでよ」

ナオミは店員にコーヒーを注文してから、ふっと息をついた。

「実はね、突発的に決めたわけじゃないの」

立花柚月は静かに...

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