第5章

山崎達也自らが椅子を引いた。

「これは……少し、贅沢すぎませんか?」

竹内友奈は誰もいない豪華なレストランを見渡した。

「君のためなら、どんな贅沢も贅沢すぎることはない」

山崎達也は彼女の向かいに座り、その優雅な指先でテーブルの縁をなぞった。

「松本薫、俺たちは正直に話す必要があると思う」

竹内友奈は平静を装おうと、銀食器を強く握りしめた。

「何についてです?」

「君は本当に大切にされるべきだ。無視されたり、傷つけられたりするんじゃなく」

山崎達也の声は低く、深みを帯びていた。一言一言が、彼女の心の琴線に羽で触れるかのようだ。

「あの小野良介なんて男は、君にふさ...

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