第9章

 私の魂は、すぐには消滅しなかった。

 気がつくと、私は山道に戻っていた。

 翔太と美羽が、必死の形相で駆け抜けていくのが見える。

 地震の衝撃で付近の基地局が破損し、携帯電話はまったく役に立たなくなっていたのだ。

 二人の子供はまず家に戻り、家にある唯一の魔法瓶を引っ張り出し、そこに煮えたぎる熱湯を満たしてきたらしい。

「先生が寒いって……言ってたから、お湯を持っていくんだ!」

 翔太は走りながら、荒い息の下でそう叫んでいた。

 ああ。最期に漏らした、あの小さな「寒い」という声を、あの子たちは聞き逃さずにいてくれたんだ。

 美羽はその魔法瓶を宝物のように胸に抱きしめ、一滴た...

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