再チャンスなし

再チャンスなし

大宮西幸 · 完結 · 23.1k 文字

701
トレンド
701
閲覧数
0
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

彼らは私に、愛は無条件であるべきだと教えた。母親はいつも許すものだと。家族が何よりも大切だと。

彼らは間違っていた。

私は伊藤里奈——獣医師、妻、母親。夫の傾く農場を支えるため、私は自分のキャリアを捨てた。喘息を患う息子を看病しながら8年間、彼らの必要に合わせて生活を築き、彼らの快適さのために自分の夢を犠牲にした。

そして彼らは私より見知らぬ人を選んだ。

癌を患っていると偽る美しい嘘つきが我が家に入り込んだとき、8年間連れ添った妻よりも、夫は彼女を信じた。8歳の息子は彼女が本当の母親だったらいいと願った。彼らは詐欺師と私を取り替え、私が静かに消えていくことを期待した。

その代わりに、私は自分自身を選んだ。

許す女性もいる。家族のために戦う女性もいる。崩れ落ちて二度目のチャンスを懇願する女性もいる。

私は裏切りの灰から帝国を築く女性になった。

チャプター 1

獣医師になって十年、忍耐力にはそれなりの自信があったけれど、目の前の子牛はなかなか産道を抜けてくれそうになかった。

「いい子よ、鈴。もうすぐだからね」

荒い息を繰り返す母牛の脇腹を撫でながら、私は囁いた。

「あなたの赤ちゃんは、私が絶対に守るから」

ひときわ強い陣痛の波が来た。そのタイミングに合わせ、私は慎重に子牛の肩を導き出す。ジーンズが血と羊水でぬめり、鉄錆びた匂いが鼻をついたが、気にもならなかった。これこそが、私が獣医師を志した理由そのものだ。泥と羊水にまみれながら、新しい命がこの世に生まれ落ちる、そのどうしようもなく美しく、尊い瞬間のために。

やがて、ぬるりとした完璧な体躯が、私の待つ腕の中へと滑り込んできた。すぐに気道を確保してやると、小さな体がぷるぷると震え、初めての呼吸を始めるのが見えた。母牛の鈴が、大きな頭を我が子にすり寄せたとき、張り詰めていた胸のつかえが、ふっと下りるのを感じた。

伊藤農場の記録に、また一つ、無事に産まれた命が書き加えられる。

その時、腰のスマートフォンが震えた。画面には、夫である水野颯太の名前が光っている。

「里奈、今すぐ手を止めろ」

彼の声は、穏やかだった納屋の空気に突き立てられた氷の刃のようだった。

「俺たちの家族の将来に関わることだ」

生まれたばかりの子牛に目をやる。まだ覚束ない脚で、懸命に立とうと震えていた。

「颯太、ごめん、今ちょっと手が離せないんだけど――」

「今すぐだ、里奈。家に帰ってこい。今すぐに」

有無を言わさぬ口調で、電話は一方的に切られた。

手の中のスマートフォンを、私は呆然と見つめた。

結婚して八年になるが、颯太が私にあんな声色を使ったことは一度だってなかった。去年の春、トウモロコシの価格が暴落し、経営が苦しくなった時でさえも。

私は急いで作業日誌にメモを書きつけ、後片付けを済ませると、鈴の体を最後にもう一度ぽんと叩いた。

「よく頑張ったわね、お母さん」

雨に濡れて滑りやすくなった田舎道を、車で十五分。逸る気持ちを抑えながら、私は家へと急いだ。

土間で泥まみれの長靴を脱ぎ捨て、冷たい板の間へと上がり込む。茶の間へと続く襖に手をかけ、一気に開け放った。そして、室内の光景に息を呑んだ。

ダイニングテーブルの、私の席に、見知らぬ女が座っていた。

艶やかな黒髪がランプの光を弾く。女が息子の水野直樹の宿題を覗き込むと、その音楽のように柔らかな声が、部屋の隅々まで染み渡るようだった。八歳になる息子は彼女の言葉の一言一句に聞き入っており、喘息持ちの彼には欠かせない吸入器が、算数のワークシートの隣で忘れ去られている。

「完璧よ、直樹くん」女は言った。「本当に賢いのね」

颯太は、やかんのそばで肩をこわばらせて立ち尽くしていた。

私が部屋に入ったことに気づくと、彼は気まずそうにこちらを向いた。

「里奈」ひとつ咳払いをして、彼が口を開く。「こちらは松本千恵さん。松本徹さんの娘さんだ」

その名前に、聞き覚えはあった。松本家は、うちの東側の牧草地に隣接する農場を営んでいる。だが、娘さんに会ったことはなかった。町の噂では、もう何年も前に大学進学でここを離れたきりだと聞いていた。

松本千恵が顔を上げた。その笑みは、なぜか目元までは届いていない。

この田舎町には不釣り合いな、洗練された都会的な美しさを持った女性だった。一部の人間だけが、努力などおくびにも出さずに身にまとえる、あの種の美しさだ。どこかで見たことがあるような気がしたが、それがどこだったか、すぐには思い出せなかった。

「やっとお会いできました、里奈さん」彼女は言った。「素晴らしい方だと、いつも伺っておりましたから」

直樹が彼女に満面の笑みを向けた。

「千恵さんがね、分数の計算を手伝ってくれてるんだ。すごく分かりやすくて、楽しいよ、お母さん」

「……そう、よかったわね」

私は颯太と、テーブルにいるこの見慣れぬ女を交互に見つめた。

「颯太、これは一体どういうことなの」

彼は計算し尽くされたような、どこか芝居がかった手つきで書類フォルダーを取り出した。

「千恵さんは、ステージ3の乳がんだと診断された。隣人として、俺たちには彼女を助ける義務がある」

彼がダイニングテーブルに広げた医療書類を、私は見つめた。星川大学病院のレターヘッド、公的な印、そしてランプの光では判読しにくい医師の署名。

「……お気の毒に」

何かがおかしい。そう感じながらも、反射的に言葉が口をついて出た。

「治療費が、かなりの額になるんだ」颯太は続けた。「それに千恵さんは、化学療法の合間に落ち着いて療養できる場所が必要だ。松本さんのご実家から病院までは四十分かかるが、うちからならたったの十五分だ。治療中に容態が急変した場合、この差が生死を分けるかもしれない。徹さんもご高齢で、四六時中の看病は無理だろう」

直樹が、おもむろに松本千恵の手を握った。

「千恵さんって、すごく勇敢なんだね。僕にも、千恵さんみたいに強くなる方法を教えてくれる?」

「あら、直樹くん」

松本千恵の声は絶妙なタイミングで震え、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「あなたは自分が思っているより、ずっとずっと強い子よ」

抗議したかった。なぜこんな大事な話を、今になって初めて聞かされるのかと問いただしたかった。しかし、直樹はまるで天使でも見るかのように松本千恵を見つめており、颯太の顎は、私が見慣れたあの頑固な一線を描いていた。

「颯太、ここは私たちの家よ」私は慎重に言葉を選んだ。「まずは、二人きりで話し合うべき問題じゃないの?」

「話し合うことなど何もない」

颯太の口調は、一切の反論を許さなかった。

「もう決まったことだ」

一時間後、私は寝間の襖口に立ち、颯太が箪笥から私の私物を運び出しているのを、ただ眺めていた。祖母の形見である銀のブラシセット、寝る前に読むのが習慣のロマンス小説、直樹の入学式の日に撮った家族の写真立て。

「彼女は薬や治療のために、縁側の向こうの風呂が必要なんだ」颯太は私と視線を合わせようともせずに説明した。「それに、君にとっても座敷のほうが快適だろう」

いつの間にか、松本千恵が私の隣に立っていた。まるでそこが自分の定位置であるかのように、敷居にそっと寄りかかっている。

間近で見ると、念入りな化粧や完璧にセットされた髪が目についた。がんと闘病中の人間にしては、あまりに奇妙な選択に思えた。

「ご迷惑をおかけして、本当にごめんなさいね、里奈さん」

彼女は弱々しく、わざとらしく息を切らしながら言った。

「これがあなたにとってどれほど辛いことか、私には分かっているつもりですよ。死に直面したことのないほとんどの人には、助けを必要とする者の気持ちなんて、到底理解できないでしょうから」

その言葉の裏にある棘が、ちくりと心を刺した。動物たちが生きようともがく姿を、私は何年も見つめてきた。その命の重さは、人間のそれと何ら変わらないはずなのに、この女の前では無価値だと言われているようだった。

その夜、座敷の隅に敷かれた慣れない布団にもぐり込んでからしばらくして、直樹の部屋の襖が開く微かな音が聞こえた。縁側を歩く足音――颯太のものにしては、あまりに軽い。

「野生の馬に乗ったときの話、もっと聞かせて」

薄い壁の向こうから、弾んだ直樹の声が聞こえてくる。

松本千恵の、銀の鈴を転がすような笑い声が続いた。

「ええと、あれは最初の化学療法の真っ最中だったかしら。もうほとんど立てないくらい衰弱していたのだけど、ふと窓の外を見たら、それは美しい野生の馬がいて……」

私は枕に顔を強く押し付けた。

直樹が私に寝る前の物語をせがまなくなったのは、一体いつからだっただろうか。がんを前にした冒険と勇気の物語に比べて、「お母さん」はいつからこんなにも退屈な存在になってしまったのだろう。

「本当の勇気っていうのはね」松本千恵は、諭すように言っていた。「自分がどんなに苦しいときでも、他の人を思いやれる心のことなの。ちょうど、直樹くんのお母さんが、疲れているときでも動物たちみんなの世話をしてあげているみたいにね」

その言葉は、親切を装った、何より残酷な嘲りのように聞こえた。私は自分の家で、自分の居場所を、少しずつ、しかし確実に奪われつつあった。

「おやすみ、直樹」

私は暗闇に向かって、誰にも届かない声で囁いた。

眠れそうになかった。時計が十一時を指した頃、私は諦めて懐中電灯を手に、そっと納屋へと抜け出した。鈴の出産のあと、獣医用の道具を作業台に散らかしたままだったことを思い出したのだ。

道具を一つ一つ片付け、消毒し、所定の場所に戻していく。体が覚えた無心になれる作業に没頭していると、いつの間にか、松本千恵が差し出したあの医療書類のことを考えていた。

人獣共通感染症の事例で人間の医療専門家と連携するようになってから、私は何百という公的書類に目を通してきた。あの書類は……どこか、作り物めいて感じられたのだ。

私は納屋の暗闇に腰を下ろし、屋根を打つ雨音と、眠る動物たちの立てるかすかな物音に耳を澄ませた。家の窓の向こうでは、松本千恵の影が、まるでこの家の主であるかのように動き回っているのが見えた。

十年間の獣医師としての経験は、言葉を話せない相手の僅かな異変を見抜く術を私に教えてくれた。兆候は、すべて揃っていた――一貫性のない症状、都合の良すぎるタイミング、そして診断内容とまるで一致しない行動。

私はスマートフォンの画面を灯し、友人の須田沙織にテキストメッセージを打った。

『まだ星川大学病院に知り合いはいる? ちょっと、お願いしたいことがあるかもしれない』

最新チャプター

おすすめ 😍

裏切られた後に億万長者に甘やかされて

裏切られた後に億万長者に甘やかされて

565.7k 閲覧数 · 連載中 · FancyZ
結婚四年目、エミリーには子供がいなかった。病院での診断が彼女の人生を地獄に突き落とした。妊娠できないだって?でも、この四年間夫はほとんど家にいなかったのに、どうやって妊娠できるというの?

エミリーと億万長者の夫との結婚は契約結婚だった。彼女は努力して夫の愛を勝ち取りたいと願っていた。しかし、夫が妊婦を連れて現れた時、彼女は絶望した。家を追い出された後、路頭に迷うエミリーを謎の億万長者が拾い上げた。彼は一体誰なのか?なぜエミリーのことを知っていたのか?そしてさらに重要なことに、エミリーは妊娠していた。
離婚後つわり、社長の元夫が大変慌てた

離婚後つわり、社長の元夫が大変慌てた

66.2k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
三年間の隠れ婚。彼が突きつけた離婚届の理由は、初恋の人が戻ってきたから。彼女への けじめ をつけたいと。

彼女は心を殺して、署名した。

彼が初恋の相手と入籍した日、彼女は交通事故に遭い、お腹の双子の心臓は止まってしまった。

それから彼女は全ての連絡先を変え、彼の世界から完全に姿を消した。

後に噂で聞いた。彼は新婚の妻を置き去りにし、たった一人の女性を世界中で探し続けているという。

再会の日、彼は彼女を車に押し込み、跪いてこう言った。
「もう一度だけ、チャンスをください」
離婚後、奥さんのマスクが外れた

離婚後、奥さんのマスクが外れた

51.8k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
結婚して2年後、佐藤悟は突然離婚を申し立てた。
彼は言った。「彼女が戻ってきた。離婚しよう。君が欲しいものは何でもあげる。」
結婚して2年後、彼女はもはや彼が自分を愛していない現実を無視できなくなり、過去の関係が感情的な苦痛を引き起こすと、現在の関係に影響を与えることが明らかになった。

山本希は口論を避け、このカップルを祝福することを選び、自分の条件を提示した。
「あなたの最も高価な限定版スポーツカーが欲しい。」
「いいよ。」
「郊外の別荘も。」
「わかった。」
「結婚してからの2年間に得た数十億ドルを分け合うこと。」
「?」
捨てられた妻

捨てられた妻

126.8k 閲覧数 · 完結 · titi.love.writes
ロクサーヌは献身的な妻になろうと努めていたものの、彼女の結婚生活は日に日に耐え難いものとなっていった。夫が策略家の社交界の女性と不倫をしていることを知り、心が砕け散る。屈辱と心の痛みに耐えかねた彼女は、大胆な決断を下す―贅沢な生活を捨て、新たな自分を見つけるための旅に出ることを決意したのだ。

自己発見の旅は、彼女をパリという活気溢れる街へと導いた。偶然の出会いを重ねるうちに、カリスマ的で自由奔放なアーティストと親しくなり、その人物は彼女が今まで知らなかった情熱と芸術と解放の世界へと導いてくれる存在となった。

物語は、臆病で見捨てられた妻から、自信に満ちた独立した女性への彼女の変貌を美しく描き出す。指導を受けながら、ロクサーヌは自身の芸術的才能を発見し、キャンバスを通じて感情や願望を表現することに心の安らぎを見出していく。

しかし、彼女の変貌の噂がロンドン社交界に届き、過去が彼女を追いかけてくる。ルシアンは自分の過ちの重大さに気付き、離れていった妻を取り戻すための旅に出る。物語は、捨て去った過去の生活と、今や大切なものとなった新しい自由の間で揺れ動く彼女の姿を予想外の展開で描いていく。

三年続いた結婚生活は離婚で幕を閉じる。街中の人々は、裕福な家の捨てられた妻と彼女を嘲笑った。六年後、彼女は双子を連れて帰国する。今度は人生を新たにし、世界的に有名な天才医師となっていた。数え切れないほどの男性たちが彼女に求婚するようになるが、ある日、娘が「パパが三日間ずっと膝をついて、ママと復縁したいってお願いしているの」と告げる。
彼の高嶺の花が帰国した日、私は身ごもった腹を隠した。

彼の高嶺の花が帰国した日、私は身ごもった腹を隠した。

13k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
「離婚だ。彼女が戻ってきたから。」
  結婚して丁度2年、高橋桜は佐藤和也に無情にも突き放された。
  彼女は黙って妊娠検査の用紙を握りしめ、この世から消え去った。
  しかし、思いもよらず、佐藤和也はこの日から狂ったように彼女を探し回り始めた。
  ある日、長い間捜していた女性が、小さな赤ちゃんの手を引いて楽しげに通り過ぎるのを目にした。
  「この子は、誰の子だ?」
 佐藤和也は目を赤く充血させ、うなるような声を上げた。
離婚後、ママと子供が世界中で大活躍

離婚後、ママと子供が世界中で大活躍

42.7k 閲覧数 · 連載中 · yoake
18歳の彼女は、下半身不随の御曹司と結婚する。
本来の花嫁である義理の妹の身代わりとして。

2年間、彼の人生で最も暗い時期に寄り添い続けた。
しかし――

妹の帰還により、彼らの結婚生活は揺らぎ始める。
共に過ごした日々は、妹の存在の前では何の意味も持たないのか。
離婚当日、元夫の叔父に市役所に連れて行かれた

離婚当日、元夫の叔父に市役所に連れて行かれた

9.7k 閲覧数 · 連載中 · van08
夫渕上晏仁の浮気を知った柊木玲文は、酔った勢いで晏仁の叔父渕上迅と一夜を共にしそうになった。彼女は離婚を決意するが、晏仁は深く後悔し、必死に関係を修復しようとする。その時、迅が高価なダイヤモンドリングを差し出し、「結婚してくれ」とプロポーズする。元夫の叔父からの熱烈な求婚に直面し、玲文は板挟みの状態に。彼女はどのような選択をするのか?
支配する億万長者に恋をして

支配する億万長者に恋をして

31.5k 閲覧数 · 完結 · Nora Hoover
名門フリン家の御曹司が体が不自由で、至急お嫁さんが必要だという噂が広まっていた。

田舎のブルックス家に引き取られたリース・ブルックスは、姉の代わりにマルコム・フリンとの婚約を突然押し付けられることになった。

フリン家からは育ちの良くない田舎者として蔑まれ、読み書きもできない粗野な殺人鬼だという悪意に満ちた噂まで立てられてしまう。

しかし、リースは誰もの予想に反して、卓越した才能の持ち主だった。一流のファッションデザイナー、凄腕のハッカー、金融界の巨人、そして医学の天才として頭角を現していく。

彼女の専門知識は業界の黄金基準となり、投資の大物たちも医学界の権威たちも、その才能を欲しがった。アトランタの経済界を操る存在としても注目を集めることになる。

(一日三章ずつ更新中)
ワイルドな欲望 (R18)

ワイルドな欲望 (R18)

3.6k 閲覧数 · 連載中 · Elebute Oreoluwa
彼女は身体を背もたれに深く沈めながら、ゆっくりと息を整えた。彼の顔を見つめると、彼は微かな笑みを浮かべながら映画に集中していた。座席で少し前に身を乗り出し、彼が太腿に触れやすいように足を開いた。彼の仕草は彼女を夢中にさせ、その優しい手つきに期待で胸が高鳴った。

彼の手の感触は力強く確かで、彼女の高ぶる気持ちが伝わっているはずだった。そして彼が優しく触れた瞬間、彼女の想いは更に熱く燃え上がった。

この作品は、禁断のロマンス、支配と服従、官能的な恋愛を描いた短編集です。

本書はフィクションであり、登場する人物や場所、出来事は全て創作によるものです。

この官能小説集は成人向けの内容を含みます。18歳以上の読者を対象としており、全ての登場人物は18歳以上として描かれています。

ご感想お待ちしております。
田舎から来た若いお嬢様は超クール!

田舎から来た若いお嬢様は超クール!

1.2k 閲覧数 · 完結 · INNOCENT MUTISO
体が弱く生まれたアリエル・ホブスタッドは、家族から疎まれていた。キャスリーン・ホブスタッド夫人が双子のアリエルとアイビーを産んで以来、彼女は寝たきりの状態が続いていた。アリエルと接触するたびに体調が悪化することから、夫人はアリエルが不吉な存在だと信じ込んでいた。これ以上厄災を被りたくないと考えた夫人は、アリエルが三歳の時、夫のヘンリー・ホブスタッド氏に彼女を追い払うよう命じた。

ヘンリー氏は遠縁の祖母のもとへとアリエルを田舎へ送り出した。数年後、祖母が他界し、アリエルは家族のもとへ戻ることを余儀なくされた。実家では誰もが彼女を敵視し、嫌悪の対象となっていた。彼女の居場所は自室か学校しかなかった。

夜、自室で携帯が突然鳴り響く。

「ボス、お元気ですか?私のこと恋しくありませんでした?ご家族は優しくしてくれてますか?やっと私のこと思い出してくれて、うぅ...」

「用件がないなら切りますよ」

「あ、ボス、待って、私―」

田舎育ちのはずなのに、どうしてこんなことに?貧しくて見捨てられた存在のはずでは?部下らしき人物からこんな媚びた態度を取られるなんて、一体?

ある朝、通学途中、ギリシャの神のような容姿を持つ見知らぬ男性が現れる。冷酷で仕事人間、女性との距離を置くことで知られるベラミー・ハンターズだ。驚くことに、彼は突然アリエルに送迎を申し出る。女性嫌いのはずなのに、一体何があったのか?

かつての仕事人間は突如として時間に余裕ができ、その時間のすべてをアリエルの追求に費やすようになった。アリエルへの悪評は必ず彼によって否定される。

ある日、秘書が彼のもとへニュースを持ってきた。「社長、アリエルさんが学校で誰かの腕を折ったそうです!」

大物実業家は鼻で笑い、こう答えた。「バカげている。あの子は弱くて臆病で、蝿一匹傷つけられないんだ。誰がそんなデマを流しているんだ?」
一晩の契り、社長様、優しくしてね

一晩の契り、社長様、優しくしてね

5.9k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
元カレに裏切られた後、私は悲しみを忘れるためにバーに行った。アルコールの影響で、最終的に一人のハンサムな見知らぬ男性と寝てしまった。

翌朝、慌てて服を着て逃げ出し、オフィスに到着した時、驚いたことに、あの夜を共にした男性が新しく着任した社長だったのだ……
妊娠を隠して退職…社長は後悔の涙を零す

妊娠を隠して退職…社長は後悔の涙を零す

2k 閲覧数 · 連載中 · 午前零時
予期せぬ妊娠が、報われない愛の現実と向き合わせた時、彼女は気づいた。もう、痛みしかもたらさない愛のために、自分を犠牲にはできないと。かつては希望に満ちていた心は、今は疲れ果て、前に進めなくなっていた。彼女は決意した。この傷つきと願いの循環から抜け出すことを。

しかし、彼女の沈黙と忍耐に慣れていた彼は、彼女を手放すことを拒んだ。彼女の心を取り戻そうと必死になる中で、彼は気づき始めた。本当の幸せは、ずっと彼女の手の中にあったことを...